物語や昔話は子供の頃から好きだった。夏に放送される「怖い話」なども宿題を放り出して聴いていた。大学2回生の頃、先生からアショーカ王が主人公の仏教説話を紹介された。世界史では「ダルマ(法)による統治を行った高名な人物」と教わったアショーカ王が、説話の中では、仏教に帰依した後も多くの人を殺害していた。非難すべき所行だが、そうしてしまう王にも同情できた。仏教への帰依により彼は何を得て、何を失ったのか。何故、仏教徒はこのような説話を大切なものとして伝えたのか。仏教説話には未だ多くの謎が残されている。入学される方々にも、是非これらの謎に挑み、仏教の面白さに触れてほしい。
たとい他人にとっていかに大事であろうとも、(自分ではない)他人の目的のために自分のつとめをすて去ってはならぬ。自分の目的を熟知して、自分のつとめに専念せよ
(『ダンマパダ』第一六六偈:中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』岩波文庫, 1978, p. 33)